健康食品による健康被害
【2007/08/10】
最近、毎日の新聞、テレビなどで「健康食品」(1. サプリメント、supplement、補完食品、2.漢方薬品など、3.食品)の「使った、効いた」コマーシャルが目立つ。それを繰返し聴いいると、かえって、疑いを持つようになった。
そこで「現在の医療の分野を二分する形で登場した補完医療の一つ、健康食品が持つ本質的な課題に取り組んだ日本で最初の本」を紹介する。
著者は、1981年、筑波大学在職中に、ボランテイア活動「中毒110番」を開始され、その活動は(財)日本中毒情報センターに発展した実績を持つ。筑波大学名誉教授。
●(内藤裕史著、健康食品 中毒百科、丸善株式会社、平成19年、
Poisoning Dietary supplements andChinese herbs, Hiroshi Naito」)
第一部;痩せ薬、第二部;健康食品、第三部;漢方薬、生薬
序文:
がんで死亡する人が30年間に2倍に増え、三人に一人ががんで死亡するまでに増え続けている。死因の二位、三位を占める心疾患、脳血管疾患も、その元になる動脈硬化そのものを医学が治すこと、まして老化を防ぐことは不可能である。肥満、ストレスを含め、自分の健康は自分で守る以外にない時代になっている。こうした中、補完代替医療が登場したのは必然である。
補完代替医療を大きく二つに分ければ、1)ヨガ、気功、体操、ダンス、音楽療法、マッサージ、イメージ療法など心身に対する物理的なはたらきかけと、2)科学的な補完、つまり健康食品の補完である。
ここで健康食品とは、ダイエット食品、ハーブ、生薬、漢方薬など、医薬品と違い副作用がないと一般に信じられているものである。
医薬品は、有効性と安全性の化学的な根拠の上に国が市販を認めている。
この本で紹介した健康被害事例のほとんど全ては学術雑誌に論文として発表されたものである。引用した論文数は和文537編、英文その他548編、紹介した事例はこれとほぼ同数、合計1,000件を越す。
健康食品を23日間飲んで死亡(P9)、がんになり(P17,P124)、奇形児が生まれ(P276)、母親が飲んでいたサプリメントで胎児や新生児に障害が出(P134,P301,P311)、新生児が死亡(P133)、胎児が死亡(P274)、母児ともに死亡など、不幸な例だけでなく、救急車で運ばれ、肝不全から肝臓移植を移植を受けるに至り、腎不全から慢性血液透析を受けるに至った例など枚挙に暇がない。そして、その陰には、貧血、腎臓病、肝臓病、神経痛、筋肉痛、息苦しい、だるいなど健康が原因とは知らずにいる健康被害は多いと思われる。
●p276. ポドフィロトキシン(八角連、痩せ薬):妊娠第5~9週にポドフリンを含む錠剤を痩せ薬として飲んでいた女性が、アザラシ肢症(phocomelia)の女児を出産した。右の母指と橈骨の欠損、左母指の重複、右外耳の奇形、右の頬から耳にかけて皮膚の垂れ下がりがあり、心臓の中隔欠損も伴っていたとみられる(Cullis 1962)ポドフイルム製剤を妊娠中に下剤として飲んでいた女性から生まれた子どもは、両側の橈骨欠損を持つアザラシ肢症であった (Rosenstain,1976) ポドフロトキシンもコルヒチンも、動物に催奇形成を示す。
●p18 アトピー性皮膚炎の治療のため個人輸入した「龍胆冩肝湯p276」などによる漢方薬腎症の報告は少なくない。アリストロキン酸には、ホスホリパーゼA2阻害作用があリそれが、腎症の発症に関係があるとみられる。p20.
◆大切なことは、毎日の食事をバランス良く食べることであり、「健康食品」などの宣伝に耳を貸さない「愚直な」生き方しかないとことを、75歳は痛感した。 07.6.31.