認知のゆがみとその治療
【2007/03/10】
● 「認知療法」心癒す、精神疾患、重ねる対話、変える思考、(2006.12.25、朝日新聞、p17.生活)
/ うつ病や不安障害など、様々な精神疾患に悩む治療法の一つとして、物事の見方・考え方を変える「認知療法」が注目を集めている。薬では治らない患者にも効果的な場面があり、再発しにくいというデーターもある。今年から集団認知療法に取り組み始めた佐賀県の病院でも、患者のうつ状態や不安感が改善される効果が表れている。治療を希望する患者も多いが、診療報酬上の問題もあり、なかなか広まらないのが現状だ。(岡崎 明子) 「患者に認知療法をもとめられても、医療側が応えられないのが現状。実施しているところはボランテイア側面が大きい」と日本認知療法学会理事長の大野裕(精神医学)は、指摘する。
● 「認知」とは、「1.嫡出(法律上有効な婚姻)でない子と父または母との間に法律上親子関係を成立させること」だが、もう一つの意味に「2.感性に頼らず推理・思考などに基づいて事象の高次の性質を知る過程。」(広辞苑)である。
この(2.)は、平たく言えば、未知の事態に出会った時、それを「感情的」でなく「理性的」に受け止め処理する考えである。その根底に、脳には、理性の脳(新皮質)と感情の脳(旧皮質)がある。
例えば、「認知のゆがみ」のパターン--- は、
1.一つの失敗や嫌なことだけを理由に「一時が万事」と考える。
2. 自分に関係ないことまで自分の責任だと考える。
3.はっきりした根拠がないまま結論を急ぎ、否定的に考える。
4.物事をすべて、白か黒で考える。
5. 「~すべきだ」「~しなければならない」と考える。
6. 自分の欠点や失敗を過大に考え、長所や成功を過小評価する。
7. 客観的事実ではなく、自分の感じ方で状況を判断する。
この考え方は、誰でも陥りやすい、欠陥(失敗、心の落とし穴)の一つで、それを「他人」から指摘されて、始めて気づき治すことができる。これは、思い違いと呼ばれる。
日本の諺に、「立場によって真理が異なる。」があり、自分の「思い違いに気づかぬ人」は多い、が同じことである。
● 「立場」とは「その人が置かれている地位や状況。また、その人の面目。(広辞苑、以下略)」を言い、真理とは、「ほんとう」のことだが、真理認識の方式には三つの立場がある。
1.観念<認識する知性>と実在との合致によって真が成立すると考える対応説、
2.当の観念が総合的な観念体系の内部で適合するときに真が成立すると考える整合説
3.仮説が事実によって検証されたとき真が成立すると考えるプラグマテズム。
現実の真理認識は、この三説によって成り立っている」 ところで、こうした「認知のゆがみ」を直す方法に「認知行動療法」がある。これは、「心理療法の1 つ。認知の歪みを検証することによって認知と行動の変容を促し,当面の問題への効果的な対処の仕方を修得させようとする治療法。」で「これは自己と世界,および未来に関する見方と自己の情動や行動が密接に関連しているという前提に基づく。直接的治療対象は認知の歪み(非機能的思考)であり,その背景にはスキーマ(図式),歪んだ信念体系,思考過程を想定している。これらは,ストレス場面に瞬時に湧いてきたり,日常的,習慣的に現れ,自動思考とも呼ばれる。認知の歪みには全か無かあるいは二分法的思考,選択的抽出,過度の一般化,独断的推論,自己関連づけなどがある。」「治療はまず問題を明確化し,自動思考やスキーマなどを同定して検討し,その根拠となる考えや理由を問いかけて修正していく。より機能的,適応的に問題に対処できるように患者と協力しながら,段階的課題作成や行動リハーサルなどの行動療法的技法も活用する。」
● 自分の立場に固執するヒトを「正論(セイロン)野郎」とよんでいた。最近は、「セイロン(ceylon)」という国(インド半島の南東にある島)がなくなって「スリランカ(Sri.Lanka)」共和国になった。(最近、子どもの時に「文部省の検定教科書で學んだ」日本のインテリに多く、富士山の五合目から、下界(庶民)を見る「官僚的立場」とも共通している。