「変る時代に変らないものは何か。」(心のシナプス)
【2007/12/10】
ぼく(五木寛之)は、そのことを、ずっと長い間考え続けていました。そして少し見えてきたのは、「人間」を考えるのでなく、「人間の関係」を考えることこそ重要だ、ということです。人間は関係がすべてである。そして家族も夫婦もまず「他人」になることから出発するしかない。他人同士からはじまる「人間の関係」。それが「生きるヒント」の先に見つけた、僕なりの「答え」です。
(五木寛之著「人間の関係」ポプラ社、2007.11.10.発行)
◆鬱から抜け出すための三冊のノート:
●以前、四十代から五十にさしかかった頃、かなり長い期間、うつ状態がつづいたことがありました。何をしても興味が湧かない、何を見ても、聞いても、面白くない。あるとき、ふと気がついて、一冊のノートを作りました。「歓びノート」です。一日のうち何か一つこれは嬉しかった、ということを記録する。「今日は、‥‥‥して、うれしかった」ということを書く。
●男の更年期に直面して:六十代の頃、何ともいえない、鬱な気分と再開した。これは、悲哀の感情でした。「悲しみノート」。一日のうちでもっとも悲しかったことを一つ書いて「‥‥だったので悲しかった」と書く。数カ月で、鬱屈感から脱出。
●三度目の鬱のおとずれ:「あんがとのート」にありがたいと感じたことを記帳する。「ナンマイダブ」と呟く。
◆1.いわゆる「人脈」は役に立たない。
●新しい人脈を築き上げる、
●敵に評価されるのも人脈。
●「無償の交友」という考え方。
◆2.愛憎をこえた親子の関係とは。
◆3.格差社会にどう生きるか。
●昔からあった格差社会。
●医療にもひろがる格差。
●「カワイイ」女性を求める日本の企業。
●文化遺産の功罪とは。
●格差は人間社会の宿命か。
●強い者が勝つのが当然では困る。
◆4.夫婦は恋愛よりも友情。
●離れていても夫婦は夫婦。
●絆の深さは時間ではない。
●「思い出」が繋ぐ人間関係。
●理解に基づく静かな愛情こそ。
◆5.挿入だけがセックスでない。
◆6.日常に生かす作法のヒント。
◆7.兄弟は他人の始まり、と言うけれど。
◆8.国を捨てるほどの友はいるか。
●信頼とは、自分を賭けること。
◆9.感謝をもとめない、励まさない。
●すべての行為は、自分にかえってくる。
●感謝も見返りも求めない。
●励ましより慰めること。
●慈のこころ悲のこころ。
◆10.本根は軽々しく表に出すな。
●常に誤解されるのが人生と思え。
●五パーセントを信じて生きる。
◆11.憂と愁は人生の贈りもの。
●心療内科に行くと言う流行。
●鬱という時代がやってきた。
●戦後の譟から一転して。
●鬱とは、エネルギーを内に宿した状態。
●「憂える」ことの大切さ。「愁」こそ人生の真実。
◆12.心のシナプスが人間の関係を作る。
●人はみな泣きながら生まれてくる。
●人生は、実に不条理なものである。
●心のシナプスという考え方。
「人間関係」。そもそも人間という字は、人はひとりでは生きていけない存在だということを示しています。
「synapse」神経細胞と神経細胞をまたは他の細胞との接続関係及びその接合部の称。この接合関係は、脳や脊髄の蛋白質や神経節に集中する。シナプシスを介して細胞の興奮が伝達される場合と、次の細胞が抑制される場合がある。(広辞苑)
セネカの書簡に、「人に恩をあたえること」と「人から恩誼を受けること」についての言葉:「人に大きな恩を与えることは、実に危険なことである。それは、恩返しをしないで恩知らずといわれることを恐れる余り、恩を受けた人は恩人がこの世にいなくなることを望むようになるからだ、というのである。変る世の中で変らぬものは「人間関係」だけだ。
(五木寛之、1932年昭和7年、福岡県生まれ、13歳、朝鮮で終戦(1945.8.14.)を迎える。作家)
用語解説:
シナプスsynapse:神経細胞の接合部の事。興奮を伝達したり抑制したりする働き。
転じて「人間の関係」のつなぎ目の役割の意。