「お風呂と血の巡り」治療
【2006/12/10】
温泉療法が「アトピー」などの皮膚疾患に効くことは、良く知られているが、それは、主として「免疫学」の立場でのみ論じられてきた。しかし、皮膚の症状を改善するということは、全身の血液やリンパなどの「循環器」の活性化にもつながる。最近、この問題について示唆に富む記事を見付けたので紹介したい。
「鹿児島市内の主婦(73)は、週に2回、鹿児島大学病院に通院するのを楽しみにしている。サウナに入れるからだ。 / 「拡張型心筋症」と診断されて1年になる。心筋が収縮する力が弱まり、心臓内の空間が広がる病気で、胸の痛みを感じて病院を受診し、わかった。
/ 2カ月ほど薬を飲んだのち、その病院の医師が同大学病院の「サウナ療法」を紹介してくれた。
/ 「心臓病なのにサウナなんて大丈夫?」。不安を感じたものの、入院して薬を続けながら週に5回、鄭忠和(てい・ちゅうわ)教授の言う通りにサウナに入った、
/ 2カ月後。64ミリに拡大していた心室の内径が57ミリに縮小。心室が分泌するホルモンで、心臓の働きがどの程度下がっているかを知る目安となる「BNP(?)」の値が 356から 60.2と、同大学が正常ととする20に近づき、心臓のポンプ機能も改善した。 / 以来、サウナ療法は休んだことはない。
/ 「薬だけで治療していた頃と違って胸が苦しくなることもないし、手足のむくみも消えた。それにサウナに入った日は気分がいいのです」(朝日新聞、2006(平成18)年12月18日、P28生活、「サウナで心不全改善」。「温熱療法血行を促進」、「温熱療法を心不全の治療に利用する病院がふえてきた。<久保佳子>)
「鹿児島大学病院がサウナ療法を始めて17年。今は毎日40~50人がサウナ浴をするようになった。
/「<どうしても風呂につかりたい>という患者さんがいたのがきっかけでした」と鄭教授。入浴は心臓に負担がかかるので避けるべきだ---それが常識だった。おそるおそる、ぬるめの湯舟に体を横たえてもらった。何度か入るうちに検査値が心機能の改善を示した。「治療に使える」。工夫を重ねサウナの利用を始めた。
/普通のサウナだと、温度は90度ほど。湿度も高く、負担が大きすぎる。遠赤外線を使い、温度を60度に。天井と床で温度差がでないように調整した。/15分間サウナに入る。「ぬるめ」に感じても体がぽかぽかしてくる。出てすぐにタオルケットで全身をくるみ、30分間、横になり安静にする。
◆心臓の負担減
心不全は心臓のポンプ機能が弱って血液を十分に送り出せない状態だ。それでも脳や肺など重要な臓器には十分な血液が要る。交換神経をはじめ様々な指令が出て、手足の血管を収縮させ、その分、脳などへの血液を確保したり、心拍数を増やしたりするほか、心臓を拡大して1回の拍動で送りだす血液量を増やそうとする。
/ 少しの間なら大丈夫でも、長く続くと、さらに心臓が弱って脳などに血液を送れなくなる。
/ ところが、サウナに入ると、手足の動脈が開くので血液が流れやすくなり心臓の負担が軽くなる。静脈も広がり、心臓に戻ってくる血液の圧力が減る。それで心不全が改善される--- 鄭教授らはそう考えている。
/ 動脈硬化が進んで足の血管が詰まり、痛みや壊疽などを起す閉塞性動脈硬化症の患者にも、サウナ浴を始めている。/ 大分県別府先進医療センターの尾山純一助手は昨年、別府温泉の湯を使った温熱療法の臨床研究を始めた。
/ 40度のお湯に10分間、へそまでつかってから全身をタオルにくるんで1時間保温する。
/ 50~80代の患者15人を対象に2週間続けたところ、ほとんどの人で心機能がよくなり、息切れなどの症状も改善した。何より、温泉地ならではの試みが喜ばれている。「家庭で出来る、足湯のはなし」(後略)
私事で恐縮だか、70歳を超えたとき「冠動脈閉塞」を体験し5本のステントを装着した。血液の流れが良くなると、老化の予防の効果になると思い、週一回、千葉県市原の校舎での講義の前日、八幡宿「薬湯センター」で、「温泉療法」を楽しんでいる。